「卒業」からの卒業

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 "はじめまして、Nasty さん……いえ、お久しぶり、那須(なす)君。高校卒業以来ですね。覚えていますか? 高橋 麗香(たかはし れいか)です"  ……!  もちろん覚えている。忘れられるはずがない。それはまさしく「卒業」のモチーフとなった、高校時代俺が好きだった女の子の名前なのだから…… --- 『那須君、あんまり変わってないね』  メッセンジャーアプリの画面の中の高橋さんが、ふんわりと笑う。正直、高校時代の面影はかなり薄くなっていた。だけど……笑顔を見ると、やっぱり彼女だ、と思わせられる。  こちらは昼の12時だが、向こうじゃ夜の11時。でも、彼女はあまり眠そうには見えなかった。 「高橋さんは、ずいぶん変わったね。すごくきれいになった」  そう。高校時代よりも彼女は随分美人になったようだ。化粧のせいだろう。それほど濃くはないけど、元の顔が整っているので薄化粧でも十分美しく見えた。  とたんに彼女が訝し気な顔になる。 『前言撤回。那須君、チャラくなった。やっぱ芸能人なんだね。ザギンでシース―食べたりすんでしょ』  思わず俺は苦笑する。 「いつの時代だよ。今そんなこと言ってる業界人いないから」
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