「卒業」からの卒業

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「え……いや、だけど俺、ジャズってあんま詳しくないし……なんか、難しそうなイメージがあるんだけど……」 『何言ってんの! あれだけ小難しい曲書いてるくせに。「アフォーダンス」のサビなんか、FからFaug/(オーギュメントオン)B ,A#M7(シャープメジャーセブンス)でしょ? あんなのJPOPのコード進行じゃないよ』 「……」  さすが。彼女はよく分かってる。確かにそこは俺が一番気合い入れて作曲したフレーズだ。 『だから、那須君もジャズミュージシャンになってさ、それで……私に楽曲提供して欲しい。君とセッションもしたいしさ。今はオンラインでコラボできる環境も整ってるし』 「……!」  なんてことだ。彼女の口からそんな言葉を聞けるとは……  目の前がぼやけてきた。 『あ、あれ……? 那須君、どうしたの……? 泣いてるの……?』  涙をぬぐってみると、いつの間にか高橋さんが心配そうな顔になっていた。 「ごめん……嬉しくてさ……俺、高校時代、君と……一度だけでも一緒に演奏したいって思ってたんだ……その夢が、十年越しにかなうなんて……」 『え……そうなの?』困惑した顔で、高橋さん。
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