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『私も高校の頃は君のこと、ずっと気になってた。でも、話す機会なんかなかったし、音大受験でそれどころじゃなかったから……音大に入ったら入ったで、ものすごい競争が待っていて……落ちこぼれた私は、ジャズに活路を見出して……ニューヨークに渡ってからも、ただひたすら勉強、練習の毎日で……でも、ようやくデビューが見えてきて、ふっと気が抜けたとき、君のことを思い出したの。だから君の曲をカバーした。ひょっとしたら、いつか君が気づいてくれるかな、なんて……でも、思ってたより随分早く見つけてくれたね』
そう言って、高橋さんが再び、ふんわりと笑った。
「……」俺は言葉を失う。
『けど、那須君だって、好きな人くらいいるよね。もしかして……結婚してたりする?』
「いや。昔は付き合ってた女の子もいたけど、今はいない。結婚もしてない」
『そっか……』
なんだろう。
こんな甘酸っぱい雰囲気、久々に感じた。
しかし……
そうか。十年前、思い切って彼女に告白していたら、俺たちは付き合っていたかもしれなかったんだ……
でも、今からでも遅くないよな、きっと。
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