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高校の卒業式で、好きだった女の子に告白できず、そのまま別れてしまった思い出を歌にしたのだが、瞬く間にダウンロードチャートを駆けあがり、十週連続トップ。リリースしたのが三月で、主題歌としてタイアップしたテレビの青春ドラマがかなりヒットした、というのも功を奏したのだろう。
俺は一躍JPOPスターの仲間入りを果たした。大学はなんとか卒業したが、就活は一切しなかった。そもそもする必要がなかった。既に新卒の初任給をはるかに上回る金額の歌唱印税を手にしていたのだから。よって俺はそのままレーベルと契約し、プロのミュージシャンとなった。
テレビの音楽番組にも出たし、屋外フェスでは花形だった。わずか数か月前まで駅前の広場でギターを抱えて弾き語りしていた、というのに。
こうして俺の「卒業」は見事に卒業ソングの定番となった。
しかし、それ以降の俺は全く鳴かず飛ばずだった。
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