「卒業」からの卒業

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 セカンドシングルはデビュー曲の半分も売れなかった。いや、それはまだいい方だ。シングルをリリースするたびに売り上げは落ちていった。アルバムは「卒業」が収録されていたためにそこそこ売れたが、それでもヒットと言えるほどではなかった。  いったい何がいけないのか。何人かプロデューサーについてもらったことがあるが、その中の一人に言われたのは、まず「曲が難解すぎる」ということだった。  確かに俺は変わったコード進行の曲をよく作る。代理コードも結構使うし、一つの曲の中で三回以上転調することも多い。聴くにしても演奏するにしても、定番のコード進行では展開が予想出来てつまらないからだ。とは言え、音楽理論から大きく外れるようなトリッキーなことはしていない。  だが、そのプロデューサー曰く、そんなものは大衆には求められていないのだ、と。JPOPには定番のコード進行がいくつか存在する。いわゆる「王道進行」だ。パッヘルベルのカノンと同じ「カノン進行」の曲も多い。それでいい、耳なじみのないコード進行では大多数の人間は安心できないから、だそうだ。
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