「卒業」からの卒業

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 たぶん、この曲はあの当時の俺でなければ作れなかった。今の俺には作れない曲なのだ。だとしたら……俺はもう、「卒業」のような曲を作ることはできない、ということなのか。いったい俺はどうしたらいいんだろう……  悩んだ挙句、俺は八枚目のシングルではサビに王道進行を使い、定番のフレーズを歌詞に取り入れてみた。しかし……それでも売れなかった。しかも、売れないだけでなく、路線変更したせいでそれまで存在していた数少ない俺のファンさえもが離れていってしまったのだ。  もう、俺はどうしたらいいのか、皆目わからない。  いつしか、あれほど好きだった音楽が、全く作れなくなったし聴けなくなった。そんな俺がレーベルに見限られるのは、当然と言えば当然だった。  ほとほと痛感させられた。結局、俺は一発屋に過ぎなかったのだ。そんな奴はこの業界では珍しくない。いや、この業界だけじゃない。小説家だって、一冊は書籍化されたものの、二冊目が出せずに消えていく奴は多い。きっとどんな業界だって同じなのだ。たまたま「まぐれ(フロック)」で当たっただけの、才能のない人間がたどる末路ってヤツは。 ---
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