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それから数日後、俊哉の家に忘れ物をした。家を行き来していると脳が誤作動を起こして俊哉の家にカバンごと忘れてしまう。まぁ、お隣だしすぐに取りに行けるからいいんだけど。
「でさー嵐馬が超かわいいの。俺を照れさせるためにあの手この手でイタズラしかけてくるんだけど、それが猫みたいでさー」
玄関のドアを開けたところで、俊哉の声が聞こえた。どうやら部屋で誰かに電話をしているらしい。会話の内容が気になってドアを静かに閉めて忍び足で侵入した。
「ガチでかわいいんよ。もう幼稚園の頃から好きすぎてお菓子あげまくってたら怒られたしな」
俊哉は電話に夢中になっているようで俺の存在に気づいていない。話が終わるまで待っていようかと廊下で待っていれば、俊哉が出てきた。
「あ、え……? なんでいんの??」
俊哉はすぐに電話を切った。それで珍しく照れている。大好きと簡単に言えるのに惚気を聞かれるのは別らしい。
「カバン忘れたから取りにきた」
「あーそっか、そういえばあったな。待ってて取りに行ってくる」
俊哉の表情が珍しく崩れている。その瞬間を逃したくなかった。
「俊哉、待てよ。顔見せろって」
「あーもう後でな、後で」
俊哉の照れ顔は超絶レアだ。絶対に逃したくない。部屋に逃げるのを追いかける。
「嫌だ今がいい。なぁなぁ、俺のこと猫だと思ってんのほんと?」
「そこから会話聞いてたのかよ」
今度は驚いた表情だ。俊哉の表情を崩すのはどんな娯楽よりも楽しかった。一生飽きないと思う。
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