第二ボタン

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 そのまま意識が遠退き、気を失うように眠ってしまうと、気づけばもう朝になっていたそうです。  ですが、そんな恐ろしい目をに遭うのはその日ばかりじゃなかったんです……。  その翌日も、そのまた翌日も、そのまた次の次の日も、立て続けにAさんは夜中に目を覚まし、その金縛りと首を絞める謎の女生徒に夜毎悩まされるようになってしまいました。  目を覚ますと金縛りにかかっていて、馬乗りになった女生徒に激しく首を絞められて意識を失う……毎回、同じパターンなんですが、相変わらずその顔は影になっていて見えません。  さすがにもうこれは気のせいなんかじゃありません。なぜ、自分がこんな恐ろしい目に遭わなくてはいけないのか? いったい何が原因なのかとAさんは考えてみました。  そもそも、いつからこんな変なことは起き始めたんだろう? そう思い返して不意に頭に浮かんだのが、あの〝第二ボタン〟だったんですね。  あのボタンを先輩からもらって、付きあうようになったあの日以来、誰かに睨まれているような視線を感じるようになった気がする……。  それに、視界の隅に映るのが複数人の違う女生徒だってことを考え合わせると、もしかしたらこれは、Aさんと同じく先輩へ思いを寄せる女子達の生霊というか、嫉妬や恨みの念が人の形を成して襲ってきているんじゃないか?……そんな仮説にAさんは思い至りました。  その中でも一番強く嫉妬の念を抱いている女生徒の生霊が、あの首を絞めてくる女生徒なのではないかと……。  しかし、なんとなく原因がわかったところで先輩と別れるわけにもいきませんし、なんの問題解決にはなりません。  この前も軽くあしらわれたので、先輩やBさんに相談してみても、また悪い夢でも見たんだろうと言われるのがオチでしょう。  では、いったいどうすればいいのだろう? と思案する傍ら、なおも恐怖の夜が続いて幾日か経ったある日のこと……その日は、いつもと少し違っていました。  金縛り状態でなんの抵抗もできないまま首を絞められるのは同じなんですが、ますます嫉妬の念が募ったのか? 女生徒は首をぎゅうぎゅうと絞めつけながら、上体を倒してAさんに顔を近づけてきたんです。  するとその時、近づいたことでついにその顔がAさんにもはっきりと見えました。  ですが、女生徒の顔を見た瞬間、Aさんはその驚きに心臓が止まるかというくらいの強い衝撃を受けたんです。
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