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土偶の方をちらりと見ると、こちらもずっと術を使い続けているらしく、ハァハァと息が上がっている。
小砂利の山はあちこちにうず高く積まれている。
これだけ術を使い続ければ、霊力が保たないのだろう。
土偶は額の汗を拭うと、ぎりりと歯噛みし叫んだ。
「ぐぬぬ、しつこい奴らめ」
土偶は戦い方を切り替え、何処からか太刀を取り出して蛇に襲いかかった。
次々と黒い蛇たちを倒していく土偶。
戦い慣れてはいるようだけど、疲れのためか徐々に黒い蛇に押されてきている。
このまま戦い続けたら、蛇の餌食になってしまう。
悠長に賭けとか言ってられない。
「土偶、無理しちゃ駄目よ。ここは一旦引きなさい」
私は心配で叫んだけれど、土偶は戦いながらも首を横に振った。
「祝言がかかってるんだ。放っといてくれ」
ああ。
この人はまた言うことを聞かない。
賭けをしているからといって、殺られたらなんにもならないのに。
嫌な予感しかしない。
土偶を放って置くわけにもいかず、私は彼の近くへと駆け出した。
間に合ってと願う間もなく、土偶は黒い蛇たちに取り囲まれてしまった。
ゼイゼイと荒く息を吐く土偶に、黒い蛇たちは一斉に飛びかかった。
「土偶!」
土偶は黒い蛇たちの中に姿を消した。
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