ねえ 先生

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ねえ 先生

どうせ私なんてなんとも思ってないんでしょう? 私はまだまだこどもで  あなたになんて追いつけないってことは よく分かってる よく分かってるんだよ これはきっと恋じゃない 恋じゃないって 自分にそう言い聞かせてる いつも 歩くあなたの後ろ姿を目で追ってるの どうせ私の気持ちになんて気づいてないんでしょう? あなたの背中に問いかける 私がいくらあなたの背中を見つめても あなたが振り向いてくれないってことは 分かっているのにね この前 初めて乗ったあなたの車 もちろんふたりきりじゃないけれど 後部座席からあなたの後ろ姿を見つめてた ふとした仕草にどきどきしてたよ バックミラーに時々映るあなたの目 頭をかくあなたの手  ドアに寄り掛かるその腕と 頭にかけたサングラス 咳払いひとつでさえも ぜんぶ ぜんぶかっこいいよ 指でそっと書いた あなたの座る運転席の後ろに 「すき」の二文字 どうせそんなことに気づきもしないんでしょう? きらりとひかる あなたの左手薬指のその指輪 先月結婚したんだよね その指輪少しゆるくないですか? って言ったら バレた? って笑って私に指輪を手渡して見せてくれた この指輪を毎日つけてるんだよね これからもずっとつけてくんだよね こんなに近くにいるっていうのに あなたの心はどこか遠く遠く 私の気持ちは絶対届くことはないの 届かなくてもいいの だけど 今はただ 遠くからそっと想ってるだけ いいですか? ねえ 先生
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