嘘つきは遠まわり

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「足立さんって広瀬くんと付き合ってるってほんと?」 「……え?」  ある日、特に話したことないクラスメイトにそう聞かれた。 「付き合ってないけど……?」 「え、そうなの?」 「誰がそんなこと言ってたの?」  身に覚えのない話に聞き返せば、クラスメイトの女の子は「んー」と首をかしげて言った。 「しらない。なんか噂になってたから気になって聞いてみただけ」 「噂? なにそれ」  不穏な空気を感じ取ったのか、厳しい声で尋ねたのはみっちゃんだった。 「なんかね、修学旅行で2人っきりでいるとこ見た、とか?」  みんな他人の恋バナが好き。  ちょっと男女が一緒にいれば。  駅まで数分の道のりを一緒に歩いていれば。  コンビニに一緒に寄り道すれば。  何だって恋バナに変換される。  事実かデタラメか、そんなことはどうだっていい。  自分たちが楽しければそれでいい。 「付き合ってないよ。みんなにもそう言っといて」  この時、恋バナに変換されていたのはわたしたちだった。
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