Happy Graduation! Congratulation!

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「あぁ、もちろん。ごめん、そんなわけで工藤さんまた」 「相変わらずノロケてんな。まあいいじゃん、お前ら同じ大学に進学するんだろ」 「ええ、そうなの。羨ましいでしょう?」 「知るかよ。お幸せにな!」  僕と工藤さんは東京の同じ大学に入学するっていう情報は既にクラス中に知れ渡っていた。  この後、男子は皆でカラオケに行くことになっている。女子は女子でどこかのカフェで女子会をするんだそうな。うちのクラスは仲がいい。だからここで工藤さんとはお別れだ。  友達とそのまま高校の正門を出る。きっともう、ここに来ることはタイムカプセルを開けるときくらいしかないんだろう。何人もと連れ立って繁華街に向かう道すがら、もうこんな風にこの道を連れ立って歩くことも、毎日聞こえていた高校のすぐ近くの商店街の呼び込みの声を聞くことも、もうないのかもしれないと思う。そうするとリアルタイムで感じているこの感覚にすら既に懐かしさを覚える。この瞬間は次々と過去になっていっている、その実感。  それほど、この今にも過ぎ去ろうとしている高校3年間というものは僕にとって濃密だった。  とはいえカラオケは何の感慨もなく終了した。それで僕は親友の健吾と一緒に一次会で離脱することにした。この3年間。もっというと中学のころからの6年間をあわせて僕の真実の味方というのはこの健吾しかいなかったんだ。 「遥斗、お疲れ様」 「ああ、本当に。ふう。なんだかもうすごく疲れたよ」  繁華街とは少し離れた喫茶店に入る。  ここに入るとホッとする。少しレトロな、およそ高校生が立ち入るとは思えない喫茶店だ。コーヒーも600円と少し高い。けれども僕の安らげる場所はずっとここくらいしかなかった。  それでもここしかなかったのだ。逃げ場は。
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