Happy Graduation! Congratulation!

4/5
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 僕はほぼ5年半ほどの間、つまり中学高校の大部分を通して僕と工藤さんは付き合っていると思われている。けれども付き合ってなんかいないんだ、少なくとも僕の主観では。  僕は工藤さんに告白したこともされたこともない。けれどもある日、話したこともない工藤さんに突然親しげに話しかけられて、クラスメイトの大部分から生暖かい目線で見守られていることに気がついた。  それでいつのまにか僕と工藤さんは付き合っていることになっていた。  僕はつきあってないといい続けてたけれど、照れているんだろうとか付き合ってることを秘密にしたいんだろうとか色々いわれてちっとも信じてくれない。  最初は健吾ですら最初は僕と工藤さんが”付き合っていない”ことに半信半疑だった。でも強引に毎日健吾にくっついて帰っていても相変わらず僕と工藤さんが付き合っていると皆思っていることに違和感を感じて、それで工藤さんが僕とデートをしたという日が健吾の家でダラダラしていた日とかぶっていたことから”付き合ってないこと”を漸く信じてくれるようになった。  それで僕と工藤さんはデートもプレゼントの交換なんかも何もしたことがない。なのに僕と工藤さんは順調にデートを重ねていて、しかもデートの日は僕が自宅にいる時や健吾の家にいる時とか、そういう日ばかりで一緒にいた健吾以外の人間に証明なんてできやしない。それでデートの写真は僕が恥ずかしがるから見せないんだっていうことになっている。  それで工藤さんは僕からプレゼントされたというアクセサリーや小物を身に着けていて、僕は工藤さんからプレゼントをされてるけど恥ずかしくて身に付けていないことになっている。  それでも僕が付き合っていないといい続けていると、だんだん酷いやつ扱いをされるようになってきてクラスに居づらくなっていく。しかも工藤さんは恥ずかしがるのは当然だって僕をかばうんだ。  1番気持ちが悪いのは工藤さんの意図が見えないことだ。  彼女らしいふりをするだけで彼女になろうとしているとは到底思えない。  仮に本当に僕と付き合いたいのなら僕に告白でもしてくるだろうと思う。気が弱くて僕に話しかけられないというタイプでは絶対ない。なにせ教室ではまるで彼女のように僕に話しかけてくるんだから。  それにデートに誘われたこともプレゼントを貰ったこともない。もちろんあげたこともないけれど。  それで頭がおかしくなりそうな中でなんとか過ごした。けれどもそれも今日までだ。  僕は大学はずっと東京に行くと言っていて、実際に東京の大学に合格した。そして聞かれたらその学校に行くとずっと話していた。  だから多分、工藤さんも僕がその大学に行く予定だと思っているはずだ。その、工藤さんも合格している大学に。  だから明日引っ越してしまえばそれっきりのはずだ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!