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それで迎えた新学期。
桜が既に殆ど散ってしまった入学式。僕は数年ぶりに穏やかな春休みを過ごして入学した新しい大学の生活。
僕は配られたプリントに従って必修のクラスの扉を開けて凍りついた。
どことなく華やかだった気持ちはあっという間に失われた。
「おはよう。遥斗」
「なんで……ここに……」
「なんで? 彼女なんだから当然じゃない。それより大学までクラスが同じなんてやっぱり運命的!」
どうして、工藤さんがここにいる。何故ここで再会する。もう二度と合わないと思っていたのに。
東京の大学にいるんじゃなかったのか。
どうして。どうして。その言葉がぐるぐると僕の頭の中をめぐる。
「まさか健吾が……?」
「健吾? 大学は先生に聞いたのよ。彼女なんだから教えてくれるに決まってるじゃない」
先生に?
あんなに誰にも言わないでほしいってお願いしたのに。
それでいつのまにか、本当にあっという間にクラスの中で僕と工藤さんが付き合っているという話が広まっていく。
それはなんだかもう僕の人生が工藤さんという色で真っ暗に染め上げられていくように。
これはいつまで続くんだ?
一生?
ずっと?
誰か助けて。
了
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