花に嵐のたとえがあれど

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 俺は馬鹿だった。  俺にとってはどうでもいいことだったんだ。亮が養護施設の子であろうと、ハーフであろうと、どこの国の人だろうと。ただ、亮は親友で、とても良い奴だと言いたかっただけだ。  思ってもみなかった。俺にしてみれば単なる人となりの説明でしかないことが、周りの人間に重大な差別を植え付けるなんて――。  取り返しのつかないことをしてしまった。俺の軽率な言動で、亮は入学したその日からいじめの対象になってしまったのだ。  俺はしばらく亮がいじめられていることにさえ気づかなかった。クラスが違ったし、何より俺は鈍い。  夏休みに入るころになっても、いつも一人でいる亮を見て“気の合うやつがいないのかな”程度に思っていた。また祖母宅に厄介になるときにでも積もる話を聞こう、などと、悠長に考えていたほど、俺はどこまでもめでたい奴だった  だが、自分の身の回りにも異変が起た。  ある日突然、小学生の頃から一緒にいた友達に、あからさまに避けられるようになった。  思ったことをすぐに口に出してしまうタイプだったし、俺はなんでもはっきりさせないと気が済まない。「言いたいことがあるなら言えよ」と、問いただしたら「そういうところだ」という答えが返された。 『お前、無神経でうぜーんだよ。もう、話しかけんな』  その日から俺も一人になった。
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