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それからの日々、アイツのことを忘れたことはない。
きっとアイツは俺のことを怒ってなんかいないんだ。そう思う日もあれば、やはりきれいさっぱり記憶から消し飛んでいてくれたらいいのに、と思う日もある。俺はいまだにその繰り返しを生きている。
大人になるにつれ分かってきたことがある。俺の空気を読めない振舞いは一種の性質だったらしい。思うがままなんでも言葉にしてしまっていた小学生時代はリーダーシップと受け取られたが、中学時代は……。
今でこそ年相応の受け答えができるが、子供の頃はそのせいで分からないことだらけだった。なぜ、相手が怒るのか。自分から離れていくのか。
教員になったのは少しでも俺や亮のような子供の手助けがしたかった――なんて、俺は今でも傲慢だ。人間の本質、そんなところは変わらない。それでも。
中学時代、俺たち周りには誰もいなかった。誰も俺たちを見ていなかった。
あの時の亮を俺が救ってやりたい。そして、俺も救われたい。
あれから二十年。アイツとの想い出の町にはもう何年も訪れていないが、きっと今でもあの時のまま、坂の上には養護施設があるのだろう。
あのやさしい時間が流れる俺たちの離宮。そこでいつか会える日が来るのだろうか。
いつか、『待ってる』と言ってくれたアイツに会いに行ける人間になりたい。けれども、やはり、俺がどんな人間になろうとあの日々は戻らない。どの面を下げても、会うべきではないのかもしれない。
そう考えると浮かぶのが“さよならだけが人生だ”という言葉だ。
袖口に付いた桜の花びらをつまみ、どんなに思い返してみても、あの日、桜の花が咲いていたかなど、記憶の片隅にもない。
校門を閉めて、看板を倉庫へと運び、昇降口の鍵を閉めれば今年の懺悔も終わる。
懺悔を終えた俺は二十年のときを経てアイツと花びらなど浮かべた酒を酌み交わす情景など空想する。
卒業によせて、そんなことを毎年のように考えるのだった。
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