1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
 永遠があればいいのにと、どんなことにでも思ってしまう。それは終わる直前まで思っていて、けれど終わったらそんなことは思わない。それが正しい終わりだと思うから。  卒業式の間ずっと思ってた。このまま学生生活が終わらなければいいのにと。卒業式はまだ終わりではないから。卒業式の終わりがこの学生生活の終わりだから。  いやなことがなかったわけじゃない。けれど、それはきっとこれから先だって同じだ。それなら、予想ができる範囲のことしか起こらないこの生活が続いた方がずっといい。  そんなことをずっと考えていると、ふと音がおかしいことに気付く。  同じ音がずっと続いている。人の声だろうと思うのに息継ぎもなく、ずっと途切れない。  前を見る。校長先生が立っている。校長先生のお話か何かだったのだろう。確かにこれは校長先生の声だと思う。イという音がずっと続いているみたいだ。そっと周りを見る。誰も動いてないみたいだ。  思い切って後ろを見る。真面目な彼女はきっと私のことを叱るだろう。そのはずなのに、彼女も動かない。  怖くなって立ち上がる。誰も、私の方を見ない。体育館の外に向かって走り出す。  走る、走る、走る、走る。外はない。違う、校庭まではある。学校はある。けれど空は校舎の一番高いところと同じ高さに天井を作ってそこに空のテクスチャをはりつけたみたいに高さがない。門の外はそこに壁が作って街が描かれているみたいだ。  それでも出られるかもしれないと門に向かう。けれどそこにはやっぱり壁がある。出られない。背後からあの音が追ってくる。ずっと同じあの声が続いている。  私が欲しかった永遠はこういうものじゃない。  こんなもの、予想ができない嫌なことじゃないか。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!