親の心、子の心

2/23
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「今日はいいのよ。ほらほら、遠慮しないで食べてよ」 「母さんの料理はうまいからなぁ」 「はい、どうぞ」  喜美恵(きみえ)が肉じゃがをよそい、制服姿の知花(ちはな)の前に置いた。 「……」    知花は少し頭を下げただけで、膝の上に置いた手を動かそうとはしなかった。 「アレルギーとか嫌いな物はない?」  喜美恵が優しく問いかけると知花は小さく頷いた。 「じゃあ、唐揚げも食べて。あ、ちなみにローストビーフは買ってきたものだからね。美樹はここのローストビーフしか食べないのよ。生意気でしょ?」 「これ、本当に美味しいのよ。食べてみて」  美樹がローストビーフが盛り付けられたお皿を知花の方へ寄せた。  賢太郎(けんたろう)は黙々と食べ続け、良雄(よしお)はその光景を肴に晩酌をする。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!