親の心、子の心

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「いっぱい食べてね〜」  母の喜美恵(きみえ)はみんなが囲んでいるダイニングテーブルにおかずを並べる。 「母さん、作り過ぎじゃないか?」  父の良雄(よしお)がテーブルいっぱいに並べられた、天ぷらや鶏の唐揚げ、肉じゃがにローストビーフ、ポテトサラダとマカロニサラダを見渡しながら目尻を下げた。 「ごめんなさい。みんなの好きな物を用意したら、こんなことになっちゃって」  喜美恵が舌を出すと、みんなに笑みがこぼれる。 「あれ? でもお母さんの好きな物がないんじゃない?」  長女の美樹(みき)はそう言いながら、目の前に重ねて置かれた取り皿をみんなに配った。 「そんなことないわよ。ここに並んでいるのは全部お母さんの大好物よ」 「そうだけど、お母さんはアジの南蛮漬けが1番好きなんじゃないの?」  長男の賢太郎(けんたろう)がそう言って、鶏の唐揚げを1つ取り皿に置く。
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