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no-side────
「レンってマジ、声だけはいーよなぁー」
「声だけなんて失礼な……ほら」
恋はカチャリと眼鏡のブリッジをあげながら若干胸を反らし中途半端なジョ〇ョ立ちを披露した。
「ぶはははっ!ッ逆だ逆!」
「ブフッ……このガッコーで真っ黒なうえになっがい前髪、それに眼鏡!…トドメに学ラン上まで留めるとかッ!陰キャにしか見えねって!!」
「ちょーっと!カッコイーでしょ眼鏡美男子!!ほら見てよ」
恋が笑う男子生徒にテンション高くジョ〇ョ立ちのままちょこまかと詰寄り、高速で何度もカチャカチャとブリッジをあげて見せた。真顔なのだが逆にそれがクラスの生徒たちのツボを見事に刺激していた。本人も心做しか楽しそうだ。
「ぶはっちょ、やめ……おまッもういっぺん黙れ!…ッぶふ…いや止まれマジッ!!ギャハハッ!…つか!お前は美男子じゃねーだろうが前提がちげってッ!うはははっ」
苦しそうに笑う男子生徒を一瞥すると恋は満足気に頷く。そろそろ先生が来るだろうと大人しく席に着くと、それをみて生徒たちが「やっぱくそ真面目かー?」と恋をまた笑うが、それにはいじられキャラの平凡をからかうようなものでは無い、明確な友人としての好意が滲み出ていた。
恋はこんなナリだが不良校でそれなりに馴染んでいた。というのも、恋の見た目は確かに彼らの言う通り一見“クソ真面目”と称される格好をしているが、実際中身は面白みのない人間とは程遠い。黒髪で制服の学ランは上まで留めているがよく見ればピアスも開いているし、服の内側には透ける青みがかった灰色の石が嵌め込まれたペンダントが身につけられている。
そんな恋の学力に関してだが、程近くにある令息等が通うような学園にも入れるほどに全く問題がない。
──では何故このような底辺校に在籍しているのか。
それは、残念ながら恋はその他の面において頗るポンコツと言う他なく、受験したものの答案が全てひとつずつズレていたという致命的なミスに寄り、受験したもののあえなく断念することになったのだ。
余談だがその事実は皆知っており、頭の良さは認めているがそれ以外に関しては笑うか微妙な顔をするくらいしか反応出来ないでいる。
……答案がズレていたことを何故恋が知っているかと言うと、彼は終了の5分前までうたた寝していた。そして目が覚めた為、みんなが受験でよくやるという“見直し”という行為をしてみようと思い至ったからだ。ただ、見直しは受験でなくても普通のテストでもする事が一般的なはずなのだがそれは恋の頭の中にはなかった。
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