紗枝野 恋

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「中でも紗枝野 愛と東屋 昴は中学の元トップ組ですが、その他2人の西村と北岡という子達は特に特筆することも無いですね。強いて言うなら東屋と同室という事くらいで、その恩恵で近くにいさせてもらえているようなものでしょうか」 「残りは金魚の糞か」 「さぁ、どうでしょう」 玲二は顎に手を当てて「紗枝野 恋はその2人を気に入っている様子らしいですけど」と神妙な面持ちで呟くと、時折昴と残り2人の住む寮室に泊まりに行ったりすることもある間柄だと迅に話した。 「あぁ。あと彼、1年のほぼ全員と面識があるみたいで、これも本人的には顔見知りといった扱いなようですけど彼らはどうやら舎弟になりたがっているようですね」 素顔が割れてからは特に、と玲二は苦笑した。不良は冷たい顔かつ強い人間を好む。のだが…如何せん不良は変にプライドが高い。それが邪魔をしてなかなか人の下につこうと言う気にならないのが普通。 本来紗枝野 恋のような見た目と強さを持つ人間は他人を見下す傾向にあり、誰かの下に着くことを嫌う性質が濃い者が多い。強さや容姿に惹かれても、自分たちを邪険にし信用も親しみ向けないような人間の下につきたいと思う人間は稀有だ。必然的に一匹狼のような扱いになり、ただ遠巻きにされるか影でドMに慕われるかの二択になることがほとんどだ。丁度、南 叶多がいい例だった。…今は違うが。 「まぁ、見ている限り南以外にそれは許されていないようですが」 「傍に置くのは気に入った奴だけ、か」 「そのようですね、私も勝手に連絡先を入れたら“消しますね”と、その場で拒絶されたので」 「は?」 パッと見一匹狼然とした薄情な人間に見える恋だが、中身はまるで違う。顔は無表情ながらも親しみの持てる物腰の柔かい話口調に、時折見せる屈託のない笑顔。喧嘩は強いのに怒ることは稀で温厚な性格というのも舎弟になりたいと不良達が躍起になる理由だった。現在唯一の舎弟である叶多は可愛さの欠けらも無い人間なのだが、弟分だと言うだけで非常に可愛がられているのは見ていて直ぐに分かる。それがまた美しく強い人間に気に入られたい不良達の心を擽るのだが、叶多が意図的に牽制している為誰も直接“舎弟にしてくれ”とは言ってこないので恋はこの事実を知らない。知ったとしてもどうする事もしない可能性もあるのだが…それはこの際置いておこう。
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