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鎖につながれて
数日後、ソラは痛む身体を我慢して水汲みに出かけた。レイからは遅くなってもいいと言われていた。
いつもの屋台まで来ると、ラジオからシエルが人々を鼓舞する強い声が聞こえてきた。
ソラは立ち止まり、その声に耳を澄ませた。少しでも元気を出そうと考えたからだった。
『生まれが奴隷だからなんて関係ない。そんなものは甘えだ!それは行動しないことを正当化する理由にはならない。
生まれは変えられない。だが、未来は変えられる!
立つ足があり、掴む手があるのならば立ち向かえ!たとえそれらがなくとも、心を奮い立たせろ!』
その放送が終わる前にソラは逃げるように走り出した。涙が溢れだす。
(どうして?私は行動した。なのに、状況は悪くなるばかり。
生まれは関係ない?そう言えるのは、最悪の生まれじゃないからだ。
どうすることもできない生まれだってある。逃れられない運命だってある。
それは全部甘えだってこと?右目を失くしたのも、私が悪いの?)
石に躓き、ソラは転んでしまった。その弾みでニフサから貰った解放軍のコインが落ちた。
コインは転がり、ソラの少し手の届かない場所で止まった。
ソラは立ち上がることもできずに泣き続けた。
そんなソラに差し伸べられる手は、なかった。
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