鎖につながれて

1/1
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ

鎖につながれて

 数日後、ソラは痛む身体を我慢して水汲みに出かけた。レイからは遅くなってもいいと言われていた。  いつもの屋台まで来ると、ラジオからシエルが人々を鼓舞する強い声が聞こえてきた。  ソラは立ち止まり、その声に耳を澄ませた。少しでも元気を出そうと考えたからだった。 『生まれが奴隷だからなんて関係ない。そんなものは甘えだ!それは行動しないことを正当化する理由にはならない。  生まれは変えられない。だが、未来は変えられる!  立つ足があり、掴む手があるのならば立ち向かえ!たとえそれらがなくとも、心を奮い立たせろ!』  その放送が終わる前にソラは逃げるように走り出した。涙が溢れだす。 (どうして?私は行動した。なのに、状況は悪くなるばかり。  生まれは関係ない?そう言えるのは、最悪の生まれじゃないからだ。  どうすることもできない生まれだってある。逃れられない運命だってある。  それは全部甘えだってこと?右目を失くしたのも、私が悪いの?)  石に躓き、ソラは転んでしまった。その弾みでニフサから貰った解放軍のコインが落ちた。  コインは転がり、ソラの少し手の届かない場所で止まった。  ソラは立ち上がることもできずに泣き続けた。  そんなソラに差し伸べられる手は、なかった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!