枯葉男と布団女

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「いいな、枯葉男さんは自由で私も自由に何処へでも行けたらいいのに」  枯葉男が見せる、波乱万丈とまではいかないが、適度に忙しく、のびのびとした自由な生き方は布団女には刺激が強かった。 「彼がみている景色を一度でいいから見てみたいな」  布団女には障害があった。  それ故に知能も少し遅れていた。  当然ながら、枯葉男のように何処へでもひょいと行けるわけがなかった。  近所の公園や駅前のケーキ屋に散歩にいくのが精一杯だった。  布団女は布団からでたら、箱庭の世界のお姫様になったような気持ちになり、自分のテリトリーを徘徊するのだった。 「いつものお店でケーキを食べようかな、それとも川辺で日向ぼっこでもしようかな……」  布団女はいつも一人きりだった。精神疾患で仕事ができてなかったからだ。  いつも足が痛くなるまで散歩しては、道端の花の写真を撮り、喫茶店でケーキを食べるのが日課だった。 「こんな、毎日で良いのかな、でも、働くのが怖い」  布団女は頭にラジカセとミキサーを飼っていた。普段はおとなしいそれらはストレスがかかると動き始め、頭の思考が纏まらなくなり、幻聴が聴こえ始めるのだ。  医者は統合失調症だという。
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