ずっと、ずっと、ずっと。

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 ***  小学校を卒業するまで、私達にはなんら異変は起きませんでした。六年生になるとほとんどの仲間がバラバラのクラスになってしまいましたが、それでも学校終わりに話をしたり、クラブ活動や委員会活動で顔を合わせたり、時間を見つけて遊ぶくらいのことはしていたからです。  ただ、たった一人だけ。和音だけは東京の中学校を受験をすることになっていたので、六年生の時は受験勉強で忙しくなってしまっていました。殆どの時間を、塾と家庭教師に費やさなければならなくなったのです。彼女が親に頼んで作って貰えた時間は、水曜日の一時間だけ。その一時間だけ、私達は六人で一緒に遊ぶことを許されていました。 『卒業したらバラバラの学校なの、さみしいな』  和音はとても淋しそうにしていました。 『本当は受験なんかしたくなかったの。でも、お母さんがどうしてもしなくちゃいけないっていうから、逆らえなくって』 『きっついよねえ。子供だって自分の意思はあるのにさ。なんで大人の言う通りに動かなくちゃいけないんだかね。それで逆らったりすると、やれ飯抜きにするとかおこずかい抜きにするとかの強権発動して無理やり言うこときかせにくるんだからさあ』 『まったくだよ!ひでー話!』 『ありがとう、日登美ちゃんも夢花ちゃんも。でも、私、お母さんに笑って欲しいから……』  彼女はとても頭が良かったので、親の期待も大きかったのでしょう。実際、とても良い点数で中学受験に合格したと聞いています。  私達はとても残念に思いましたが、彼女の門出を応援することにしたのです。卒業式の日に撮影した写真は、今でも私の手元に残ってます。  離ればなれになっても、私達の友情は揺らがない。ずっとずっと心は一緒だから大丈夫と、そう思っていました。  彼女が全寮制の中学に入学した、その日――和音がトラックに撥ねられて死ぬまでは。  しかも、その最期は凄惨なものでした。夜遅い時間。飲酒運転をしていたそのトラックは、和音を轢いたことにも――その体を車体にひっかけて引きずっていることも気づかずに走り続けたのです。  撥ねられて体中を骨折して動けなくなっていた彼女は、惨いことにそれから何キロも車に引きずられ続けて――見つかった時にはもう、誰なのか判別できないほどズタズタの有様になっていたと言います。
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