2忘れたい

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「もう! その話を聞いてからすっごい腹が立って腹が立って」 「そんなに怒ってくれて嬉しい」  自分以上に感情的になって怒ってくれる友人に、ジュリアの眦に涙が溜まる。 「ジュリアったら。こんなに可愛いのに、あいつはバカだね。大バカだ。もうさ、絶対あいつより幸せになってよね」 「ふふっ、ありがとう」  ジュリアの両手を握り、切々と訴えてくれる友人にふっと微笑む。  虚しいからこそ、涙で濡らしたまま過ごすつもりはないし、いつまでも引きずるのはさすがにしんどいので、忘れて前に進みたい。   「絶対だからね。そもそもあいつがジュリアを見せたくなくて独占してたのにさぁ。そのせいで、ジュリアはあいつしか知らなくて他に目を向けたことないし。もう、ほんと勝手で腹が立つわぁ。ジュリアは器量良しだしすぐまた出会いがあるよ」 「どうかなぁ。別にもういいかなって思うけど」  ジュリアは困ったように眉尻を下げ、ゆっくりと外へと視線を向けた。  自分たちくらいの年齢の男女が腕を組んで通って行ったが、羨ましいとも思えない。 「ダメだって。まだ二十一歳。これからだよ。浮気男を悔しがらせるくらいのイケメン捕まえて幸せになってくれなくちゃ」 「なんで、イケメン?」 「その方がすかっとするから。私やジュリアの周りがね」 「ふふっ。だったらいいね」  ウインクしながら告げるアイリスに相槌を打ちながら、そっと小さく息を吐いた。  アイリスに限らず周囲はそう励ましてくれるが、次の恋なんて考えられない。  信じていた相手にあんな風に裏切られ切り捨てられ、向き合ってきた月日のすべてが無駄だって言われたような気分だ。  浮気をされたこと、その相手が妊娠したからといって別れを一方的に突きつけられ、比べられ、お前では駄目だと突きつけられた事実。 「もう、なんかしんどいよね」  気持ちを持っていかれることが。預けることが。  そして、また裏切られるかもって思うと、新たになんて思えない。
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