73人が本棚に入れています
本棚に追加
3
翌日も渉は学校に姿を現わさなかった。病院通いで忙しいのかもしれない。そう思ったものの、さすがに五日も経つと気になってきた。渉はスマホを持っていないので、会わないと話すこともできない。
翌朝。スケッチをしようと川辺で自転車を止めたとき、後ろから声がした。
「悠希」
渉が笑いながら近付いてくる。
会ったら何を話そうかと、そればかり考えていたのに、今はただ、変わらない笑顔が見られた嬉しさでいっぱいだった。
「おはよう」
挨拶をしてから気付く。渉は制服を着ていない。白い半袖シャツにジーンズだ。講習には行かないのだろうか。
「ここで会えて良かった。話があったんだ」
ドクンと心臓が音をたてた。
改まって何の話だろう。
途切れた話の、続きだろうか。
渉が小川を見下ろす土手に腰を下ろしたので隣に座った。
ドキドキして落ち着かない。
なかなか話を切り出さないので、鼓動は益々早くなる。
「あのさ」
ようやく口を開いた。
「俺、高校辞めて、父さんの知人のアシスタントとして海外に行こうと思う」
最初のコメントを投稿しよう!