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 渉が学校を辞めたことが同級生に知らされたのは、始業式の日だった。  先生から告げられた言葉に、南が声を出さずに泣き始めた。友人達が慰める。  あんな風に皆の前で泣ければいい。そのうち傷も癒えて、新しい恋を始められるだろう。  渉がいなくなった後も大西と植田が話しかけてくれたので、残りの高校生活も独りで過ごさずに済んだ。  その後、渉から時折絵ハガキが届いた。  簡単な近況報告だけで、特別な言葉は何もなかった。撮影のため気紛れに移動していて住所不定らしく、こちらから手紙を出すこともできない。スマホもたぶん持たないままなのだろう。  夏が終わり、秋が過ぎ、冬になった。  父親を説き伏せて、冬休みは東京の予備校に通い美大を受験した。合格発表に自分の番号はなく、浪人生活の準備を始めようしていたときに補欠合格の話がきた。  春が来て、悠希はこの町を去った。
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