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言うとすぐに背中を向け、後ろにいつのまにか止めてあった自転車にひらりと乗り漕ぎ出した。塗装が剥げかかっている自転車はギコギコと妙な音をたてている。
完全にペースにのまれていて、立ち上がることもスケッチを続けることも忘れていた。古い車体がたてる音と共に自転車は遠ざかっていく。
田畑と川に挟まれた真直ぐな道を走る姿を、見えなくなるまで眺めていた。
まるで木陰に一瞬強い日が差したときのような、瞬きする間の出来事のような、残像がいつまでも消えない、そんな出会いだった。
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