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「あ」  声をあげて近付いてくる。取り囲んでいた男子たちも一斉にこちらを見た。  ドン、と音をたてて渉が鞄を置いたのは、隣の窓際の席だった。  悠希の方を見て満面の笑みを浮かべる。 「もしかして転校生? そういえば名前聞いてなかったな」  渉の問いに、大西が「水沢悠希っていうんだよ。五月に転入してきたんだ」と横から答えた。 「お前には聞いてないっつーの」  渉は大西の肩を軽く叩いた。それから正面ではなく横を向いて着席し、悠希の机に左肘を付いた。 「俺は長谷川(はせがわ)(わたる)」 「……そこ、空席じゃなかったんだ」  やっとの思いで言葉にした。  どうもペースが掴めない。 「あー、もしかして俺の存在って抹消されてたのか?」  今度は大西を見上げて言った。大西は渉の机の前に立っている。
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