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「もう、完全抹殺。父親の撮影旅行に付いて三ヶ月くらいメキシコ行くって言ってただろう? 先生も知ってるからいちいち出席とったりもしなかったし」 「……ってことみたい」  渉は悠希に視線を戻した。 「えーと、水沢か。水沢って他にいるよな」  確かに女子生徒でも水沢という苗字の子がいる。親戚ではなく偶然だ。しかし、それがどうしたというのか。 「水沢じゃ紛らわしいから悠希ね。悠希で決定。俺は渉でいいから」  何と答えるべきか迷っているうちに、一人の女子が近付いてきた。  南マユミだ。  少し気の強そうな顔つきだが、クラスで一番の美人だと男子たちは言う。東京の有名な美容師がカットしているらしい髪型や制服の着こなしなどセンスがいい。 「メキシコでマラカスでも振ってるかと思ってたけど、無事に帰ってきてたんだ」  南は腕を組んで、ニコリともせずに呟いた。  だけどわざわざ話し掛けてきたあたり、渉に対して少なからず好意を抱いているに違いない。
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