落とした翼

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 あんな大人になるものか、あんな大人に負けてたまるか、と必死に食らいついたレッスンのおかげか、わたしはコツコツとクラスを上げていき、習い始めて十年も経つ頃には教室の中で一番上のクラスで踊るようになっていた。けどそれは当たり前だった。同じ学年の誰よりもバレエに時間を費やしてきたし、通ってる日数だって、わたしが一番多かったから。それでもバレエを続けてこれたことはわたしの大きな自信になっていた。あとはコンクールに出て、それで、いつか留学がしたい。そう思っていたのに。  先生は、生徒をコンクールに出すことに積極的ではなかった。基礎をしっかり積んでから、という教えは確かにそうだと思ったし納得はしていた。けど、一つ下の学年にいた先生の娘さんだけがコンクールに出ていることにだけは納得がいかなかった。実力で言えば確かにわたしと同じかそれ以上に上手い子だけれど、だからってわたしが出れない理由にはならない。きっと出ることで得られるものだってあるはずだと、そう思っていた。  そんな些細なことから生まれた反発はレッスンに反映されていく。伸びないつま先、覚えられない順番。なにより、踊ることが楽しくなかった。一日、また一日、と休む日が増え、結局わたしは教室を辞めてしまった。
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