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「え?」
「うまく言えないが、いつもと雰囲気が違う。なにか悩みでもあるんじゃないか?」
ひそかに息をのんだ。たしかに僕は、今、誰にも言えない悩みをかかえている。それを、一瞥しただけで見破るなんて。
「明日は休みだろ。今夜、俺のマンションに来ないか。うまい酒を買ったんだが、ひとりで飲むのもなんだから、おまえと飲みたいと思ってたんだ。どうだ?」
「うん。ありがと。じゃあ後で」
さらりと会話を終わらせ、お互い仕事に戻った。おせっかいでも無関心でもない、この距離感が心地いい。
喧嘩が絶えない、出来のいい兄と比較される……、「弟」って立場は、苦労を強いられることが多いという。僕らは七つも離れてるせいか、兄弟げんかひとつ、したことがなかった。おとなになってもなお、碧唯兄ちゃんは尊敬の対象であり、頼りがいのあるヒーローだった。
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