2/2
前へ
/51ページ
次へ
「え?」 「うまく言えないが、いつもと雰囲気が違う。なにか悩みでもあるんじゃないか?」  ひそかに息をのんだ。たしかに僕は、今、誰にも言えない悩みをかかえている。それを、一瞥(いちべつ)しただけで見破るなんて。 「明日は休みだろ。今夜、俺のマンションに来ないか。うまい酒を買ったんだが、ひとりで飲むのもなんだから、おまえと飲みたいと思ってたんだ。どうだ?」   「うん。ありがと。じゃあ後で」  さらりと会話を終わらせ、お互い仕事に戻った。おせっかいでも無関心でもない、この距離感が心地いい。  喧嘩が絶えない、出来のいい兄と比較される……、「弟」って立場は、苦労を強いられることが多いという。僕らは七つも離れてるせいか、兄弟げんかひとつ、したことがなかった。おとなになってもなお、碧唯兄ちゃんは尊敬の対象であり、頼りがいのあるヒーローだった。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加