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 きゅ、と涙腺が鳴いた。熱くなる目頭を必死になだめる。なにがショックなのか、自分でも分からない。碧唯兄ちゃんは、僕の悩みを減らそうと()()してくれただけだ。ただそれだけなのに。  無理やり笑顔を作ったら、碧唯兄ちゃんの顔がじわりとにじんだ。 「ありがと、碧唯、兄ちゃん……」  ぽっかり空いた心の空洞に、疲労感がなだれこんでくる。碧唯兄ちゃんにしがみつくようにして倒れ、僕はゆっくりと意識を手放していった。
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