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「おい、朝礼中にぼーっとすんな! そんなだらけた態度で、人の命助けられると思ってんのか!」 「すみませんっ!」  びっと背筋を伸ばして敬礼し、署長に謝罪した。あの夜のことを、悶々と思い出してる場合じゃない。しかも、それが原因で寝不足になってるなんて、情けなさすぎる。 (こんなんじゃ救急隊失格だ)  僕の経験上、雑念を払拭するのに効果があるのは「磨く」という行為だ。朝礼が終わると、すぐに救急車を洗い始めた。無心で車体を磨いていると、気持ちもすっきりしてくる。きれいになった救急車を前に、満足して汗をぬぐっていると、ぽんと背中をたたかれた。 「よう、唯織」
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