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 晴美さんとの出会いは四カ月前。花屋で働いていた晴美さんに、花束のアレンジメントを頼んだのがきっかけだった。署長の昇進祝いに渡すためのものだったのだが、その出来栄えに驚いた。僕はアレンジには詳しくないけれど、みずみずしくて華やかで、どんな仏頂面な人でも笑顔にしてしまいそうな花束だったのだ。 ――あの花束、すっごく喜ばれました。ありがとうございます。ところで、僕のアパート、殺風景だし、なにか飾りたいんですけど、どんな花がおすすめですか?  すっかり晴美さんのアレンジに魅了され、何度もお店に足を運んでいるうちに、親しくなっていった。そのうち僕がご飯に誘い、晴美さんから告白してくれて、僕らは付き合い始めた。  そうして今に至る、と回想を終えたところで、晴美さんが足を止めた。 「すずらんが咲いてるわ。かわいいわね」  花と同じ目線になるようにしゃがみ、晴美さんはいつくしみを込めて微笑む。なんてきれいな横顔だろう。みとれていると、晴美さんはふわりと顔をあげた。 「見て、ほたるがいるわ」
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