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晴美さんが謝ることなんか、なにもないのに。うつむく僕を、晴美さんはそっと抱きよせてくれた。こんな時でも晴美さんは優しい。苦しくなるほど優しい。彼女の胸に顔をうずめ、情けなさにうちひしがれた。
現実から逃避して目を閉じれば、そこには晴美さんはいなかった。ぽっかりとあいた闇に、誰かの影が見える。「誰か」が誰なのかを理解するのが怖くて、夢からも逃避してしまった。また眠れない夜がやってくる。朝にたどり着くまでの、緩慢に過ぎる時間の中、ただひとつの問いをくりかえしていた。
(僕はどうしたらいいんだ……)
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