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 病院から続く歩道を、ただひたすらに走った。この体が嫌いだ。晴美さんを愛しているのに、証明するのをかたくなに拒むから。この心が嫌いだ。あんなに心配してくれてた碧唯兄ちゃんに対して、理不尽なかんしゃくを起こすから。  自分から逃げたくて、だけど自分はどこまでもしつこくついてくる。徹底的に痛めつけてやろうか。こんな自分から逃げられるなら、足が動かなくなるくらい走り続けてやる。時間の感覚がなくなるくらいに、ただただ走って、走って……。 「あっ」  なにかにつまづいて、顔面から倒れた。激しい衝撃とともに、鼻に鉄っぽい刺激を感じた。筋肉がひきつって動かない。臨界点にまで達した疲労が、あぶら汗となって、体力を根こそぎ奪っていく。  目の前をアリが横ぎっていく。ほんと、なにやってんだろ。自虐的に笑ったら、アリの姿がぼやけていった。ぼやけきって見えなくなる頃には、僕は意識をうしなっていた。
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