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「とりあえず3カ月、仕事を休めるように診断書を出す。ここでゆっくり休め。医者としての命令だ。いいな?」 「……ん」  大きな手が、頭をなでた。その手が、ふいにほおや唇に下りてきた。たったそれだけで心臓が高鳴った。なにかを期待するみたいに。 「また様子を見に来るから、おとなしく寝てろよ」  白衣の背中が去っていく。ひどく眠い。目を閉じたら、すぐに眠りにひきずりこまれていった。これほど深い眠りは久しぶりだった。  だからだろうか。  およそ10年ぶりに、あの夢を見た。  冷凍し、無意識の底に沈めていた、あの夢を。
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