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 叫んだ瞬間、夢は消えた。はっと目を開ける。薄暗い病院の天井が見える。ここは現実だ。だけど、まだ夢が続いているような気分だ。ずくずくと腰の奥が煮えている。なにかが欲しくて、いてもたってもいられない。   「……っ!」  点滴の針を引きちぎり、ベッドから下りた。病室のドアを開けたら、平衡感覚が乱れて、壁に肩をぶつけてしまった。痛みで顔をしかめながら、廊下をずるずると歩き、非常階段を登った。  砂漠でさまよう者は、渇きをいやすため、オアシスを目指す。僕も渇いていた。欲しい。この渇きをいやしてくれる存在が、今すぐ欲しい。ぼんやりと靄がかかった頭が、オアシスを感知し、ナビゲートしてくれた。  この渇きをいやしてくれる人が。  最上階の、院長室にいる。
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