38人が本棚に入れています
本棚に追加
叫んだ瞬間、夢は消えた。はっと目を開ける。薄暗い病院の天井が見える。ここは現実だ。だけど、まだ夢が続いているような気分だ。ずくずくと腰の奥が煮えている。なにかが欲しくて、いてもたってもいられない。
「……っ!」
点滴の針を引きちぎり、ベッドから下りた。病室のドアを開けたら、平衡感覚が乱れて、壁に肩をぶつけてしまった。痛みで顔をしかめながら、廊下をずるずると歩き、非常階段を登った。
砂漠でさまよう者は、渇きをいやすため、オアシスを目指す。僕も渇いていた。欲しい。この渇きをいやしてくれる存在が、今すぐ欲しい。ぼんやりと靄がかかった頭が、オアシスを感知し、ナビゲートしてくれた。
この渇きをいやしてくれる人が。
最上階の、院長室にいる。
最初のコメントを投稿しよう!