兄弟姦計

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「忘れよう、今すぐに」  夢の一切合切を、記憶から消してしまおう。でないと、父さんや母さんに「おはよう」を言うことも、碧唯兄ちゃんに「いってらっしゃい」を言うこともできやしない。いつもの朝を迎えるためにも、忘れてしまわなければ。 ……まだ高校生だった僕には、自分の本性を直視する勇気がなかった。だから、その夢を冷凍し、無意識の底に沈めることにした。意識化しなければ、そのうち消滅するはずだ。事実、就職してひとり暮らしをはじめてからは、そんな夢のことなどすっかり忘れていた。 ――それから10年の年月が過ぎ。   淫夢の続きが、僕に迫ってくるまでは。
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