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「ぐ……っ」  自分のおぞましさに、涙がこみあげてくる。面会謝絶の病室を心配そうに見ている、晴美さんの姿が浮かぶ。その病室の中で、僕は男根を抜き差しされる快楽に酔っていたなんて。 (……最悪だ、なんてひどい奴なんだ、僕は……)  ぎゅっと目を閉じたら、涙がぼろぼろとこぼれ落ちていった。懺悔の涙だった。晴美さん、ごめんなさい。許されないことだと分かっていても、心の中で繰り返し、許しを請い続ける。そんな僕を見て、碧唯兄ちゃんはなにも言わず、静かに病室から去っていった。  次の日、告げられたのは「退院」だった。心と体の整理がつかないまま、僕は鳥かごのような病室から出て、健全を是とする社会へと戻っていった。
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