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「交通事故、若い女性と幼児、内臓破裂の恐れあり。このあたりの病院すべてに受け入れ拒否された。このままじゃ患者が……!」
名前を名乗る手間さえ惜しくて、状況をまくしたてた。沈黙がおりる。碧唯兄ちゃんの経営する病院は評判がよく、つねにたくさんの患者をかかえている。駄目か。唇を噛んだ瞬間、兄ちゃんの凛とした声が聞こえた。
『すぐに来い。到着し次第、緊急手術をおこなう』
「ありがとっ!」
安堵して電話を切った。さすが碧唯兄ちゃん、決断が速い。これなら助かるかもしれない。いや、絶対に助けてみせる!
「受け入れ先は、アオイ総合病院です。全速力でお願いします!」
「了解!」
絶対に死なせはしない。「ひとつでも多くの命を救うこと」。それが、救急隊員である僕……公崎 唯織と、病院経営者である兄、公崎 碧唯が共有する、大事な信念なのだから。
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