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「よかった、二人とも助かったんだ……」  迅速な緊急手術の結果、女性と幼児は一命をとりとめた。手術室から出てきたのは碧唯兄ちゃん。すべて彼のおかげだ。  七つ年上の碧唯兄ちゃんは、現在、アオイ総合病院の院長を務めている。黒髪で長身。モデルにスカウトされたこともあるくらい、端正な顔をしている。  そんな碧唯兄ちゃんに、看護師たちがつけたあだ名は――「イケはげ院長」。頭がハゲという意味ではなく、「イケメンなまはげ院長」を略しているらしい。  碧唯兄ちゃん曰く、「小児棟に足を運ぶたび、子どもたちに『怖い!』って泣かれてしまうんだ。こっちは回診しに来ただけなのに、大泣きして逃げまとうんだ。まるでなまはげ扱いだ、マジでへこむぜ」。……端正すぎる顔が冷たい印象を与え、子どもたちには超絶不評らしい。  子ども受けは悪いが、腕は確かだ。国内で初めて、多能性幹細胞移植による大動脈弁復元手術を成功させた、心臓外科のスペシャリスト。今回も、幼児の内臓破裂部分を手早く見極め、的確に手術を行ってくれた。  そんな碧唯兄ちゃんは手術着を脱ぎながら、僕の顔をのぞきこんだ。 「どうした、なにか悩みでもあるのか?」
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