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閑話『戸田伸二』
晶に初めてあったのは、自社の中古車部の事務所だった。
日曜日。俺は中古車部の休日当番で、ネット上での仕入れチェックをしてるところだった。そこへ突然新車部のセールスがやって来る。
「おい、戸田~ 中古で40万位の仕上げでオススメないかっていうお客さんが来てるけど、今いいか?」
「あ、いいっすよ」
いつもなら、内線で連絡してくるだけなのに珍しいな、と思ったら
「あ、汚いとこですけど、中古車の担当こっちなんで。申し訳ありませんね」
「いえ、親切にありがとうございます」
あ、女の子だからか・・・ 汚くて悪かったな。
「おい、後で勤め先とか判ったら教えろよ」
「え、何で」
「いや、めちゃくちゃタイプなんだよな」
「・・・・」
耳元でこそこそと、お前なに言ってんだよ! と思ってパッと見たら、あ、ね。
もうね、うちの会社の事務員が、全員恥ずかしくなって裸足で逃げて行きそうな位の、立派なバストサイズ・・・ そういや、こいつ胸フェチだったわ!
20才位だろうか。
最近の若い子にしたら珍しく、真っ黒のサラサラストレートのロングヘア。化粧っ毛もあんまりない感じで、目の回りがパンダじゃないわ。へえ。
美人、というよりどっちかっていうと可愛いタイプで、なんかちょっとボーイッシュだ。バックプリントの黒いTシャツにブルーデニム、ハイカットの赤いコンバース。
ふうん。こんな子がいまだにいるんだって感じだった。
身長は160位で、出るとこ出て、引っ込むとこ引っ込んでる、女性らしい体つきだ。ウェストの位置が高くて、足が長いな~ とちょっと感心した。
「オススメってどれでしょう?」
「車種とか、希望は?」
「んー、ないかな」
「色は?」
「赤、白、シルバー以外で」
「はあ、じゃ、黒とか?」
「手入れがめんどくさい」
「よくわかってますね」
「バイクと一緒だから」
そう言って駐車場にある、黒いデカいバイクを指差した。
「あのバイクもワックスがけメンドクサイんですよ」
「成る程」
バイク乗りだったのか。そんな感じの格好だわ。
「じゃあ、これとかどうかな」
俺はパールラベンダーの軽四を指で示す。
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