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願いを口にするヒト
あれから1ヶ月経った。
あと11日で、受験日だ。
例の依頼主がその間何回も何回も連絡をしてくる。その度に大丈夫だから、入学準備をしろと何回も答えてきた晶である。
娘と制服を下見に行って試着でもして、オーダーにするか、既製品にするか、相談しろと指示までした。
今日はとうとう、午後イチで鑑定の依頼をしてきた。
もう、前日まで黙っててくれないかなあ。不安なのは分かるが、自分は依頼主の精神安定剤じゃないぞ・・・
ブツクサ呟きながら、クローゼットから長いフロックコートを引っ張り出して羽織る。光沢がある真っ黒なコートだ。表面に模様があるが、同色なので目を凝らさないと見えないのがお気に入りである。
しかし、これを着ると何故か男性に見えるらしいのが謎である。髪も長いし、胸とかは、そんじょそこらのお姉さん達に負けない位のダイナマイト級だ。
晶の着る服の中で一番高級品に相当するのは、多分ブラジャーで間違いない。
なんたって下着なので、消費サイクルが激しいのだから。
『あと10日御祓と御祈りしないといけないんだが・・・』
『依頼主が分かってないからな』
後ろからフワッと抱き締められる感触がある。暖かい。もうすっかり冬である。雪が降ってもおかしくない冷え込みようだ。
『今日明日辺り雪になるぞ』
『御祓がツラいわ・・・』
車に乗り込んでエンジンのスイッチを入れる。あ~ 始動が遅いわ~ 伸二君に言ってバッテリーを診て貰うか~・・・
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