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 今日も、暑苦しい位の口付けを与えられながら、ゆらゆらと見ていた夢の狭間から意識を取り戻していく。  舌を吸われ、絡ませ合い、軽く甘噛みをされて最後に軽く、啄む様なキスを繰り返した後、ゆっくり離れていく。  『起きろ、アキラ。このまま寝てると今日が終わるぞ』  耳元で囁かれる。  「んあ~ やめれ~ 寝てたい~ 昨日は大変だったんだから、たまにはサボらせろよ~」  カーテンの隙間から差し込む光は朝、と言うよりは昼近い明るさだ。  『良いが、午後から用事があるんだろう』  ああ、面倒なクライアントと午後から会うんだっけ。はあ。  実に不本意そうに目を開ける晶。  「もうこんな仕事、辞めたい~ 」  『又か、もう通算何回目だ? それを言うのは』  「回数なんか、覚えてねえよ~ 」  目の前に綺麗に整った男の顔が見える。  切れ長な黒曜石を嵌め込んだような瞳を縁取る長い睫毛、整った鼻梁、女子か? と聞きたくなるような赤く形の良い唇。真珠色の肌に、額に流れる絹糸の様な艶のある黒檀のような長い髪の毛。  傾国の美女並みの中性的な美貌はため息の出そうな芸術品だと思う。  まあ、最もコイツが普通の男ならどっかの芸能プロダクションが追いかけ回して、スカウトしようと付け回すんだろうけどねえ。 と、晶はこの綺麗な顔を見る度にいつも思う。だが、そうはならないのは、彼の姿が誰にもからだ。  そう、生きてる人間にはまず見えることはない。何てったって、半分透けてる幽霊みたいな存在だから。
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