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「つまらない。面白くない。なんだ、あの怯えた顔は……シュリュッセルがあれじゃぁシュロスは─。いや、あまり油断しない方がいいかもしれないねぇ。」
ぶつぶつと小言で、そう言いながら廊下をぷらぷらと放浪していると、嫌な寒気が背筋をなぞった。咄嗟に振り返った先には、黒髪の小柄な少女がいた。
─あれぐらいの背丈だと…後輩か、同学年…かねぇ?…いやそんなことより、さっきの嫌な寒気はなんだったんだろうか。─
またも嫌な寒気がジルを襲う。背後からだ─。
勢いよく振り返ってもそこには、彼女を慄かせるような者はいない。しかし、そこには確かにあるのだ。嫌な気配を目の前に。嫌な寒気が体に。
ジルの本能は訴えかけた。敵わない相手がすぐそこにいる。逃げろ。さもないと気付かれる、と。
逃げ出せるなら逃げ出したいのはジルも同じだ。しかし体が動かない。緊縛されているような感覚であった。影に足を捕われているような─。
「っ─!」
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