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これから何が起きようとしているのか、君がどんな目に遭うのか、考えるだけでも恐ろしかった。
もう、コーラをかけたり自転車をパンクさせたり、生ぬるい足止めをしてる場合じゃなくなって。
人を殴ったり刺したりなんか、したこともない僕が。
あの男を止めるには、ああするしかなかったんだ。
正直に言うと、あんな狭い道でアクセルをめいっぱい踏み込むのは、たまらなく怖かった。
だけど。
『いらっしゃいませ!』
君はバカみたいって思うかもしれない。でも、駅前のコンビニで迎えてくれる君の笑顔が、僕の人生で唯一の癒しだったんだよ。
利人と手をつないで歩いてるのを見た時には、目の前が真っ暗になった。あいつはクズだって、僕が言ってもどうせ信じてもらえなかったよね。
全部ばらしてやりたい気持ちが、なかったといえば嘘になる。だけど僕は、君が傷ついたり泣いてる姿を見たいわけじゃないんだ。
恋人を亡くした主人公が悲しみを乗り越え、いつか新しい恋をして、最後には幸せになる。
そんな映画は、きっと素敵だろう?
君の人生が、そうでありますように。
キラキラのハッピーエンドを、いつまでも願っているよ。
エンドロールに、僕はいないけど。
【了】
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