第9話 火弦の魔法術士

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第9話 火弦の魔法術士

 絨毯が地面につき、地に足を付けたのは赤髪のロングヘアを(なび)かせた少女。  カーヤと同じような黒のローブを着ているが、その裾には赤いフリルがついており、どこか高貴な雰囲気を醸し出している。年頃は16、17ほどで巡とほぼ同い年といった容姿だ。  赤髪の少女は、裾の端を両手でつまみ、小さく頭を下げながら左右に広げた。  「お初にお目にかかりますわ。私、火弦の魔法術士をしております。パナード・ルージュリアと申します。以後お見知りおきを」  パナードと名乗ったその少女はそう言い、頭を上げ巡の方を見た。  巡はパナードの真っすぐで透き通るような瞳に見蕩れ、しばらく言葉を失った。  すると、横からカーヤが巡を小突く。  「一応言っておくけど、パナードは既婚者だからね?変な気起こしても無駄だから」  その言葉に、巡はハッとする。  「い、いや!お前バカっ!違うから!そういうのじゃないから!何勘違いしてんの!?しょうがないわね!」  「それ私の口癖」  カーヤは冷めた目で巡を見る。  「あー、えっと、俺、巡です!麻道巡」  名乗った巡を見て、パナードはニコッと笑った。  「…あなた様が、カーヤの…」  言いかけた言葉をパナードは止めた。  「あっ、いいえ。なんでもございません」  「えっ?」  ―俺がカーヤちゃんの…なんだ?  「あれ?魔法術士?魔法氏じゃなくて?」  「その辺りのご説明は、道中お話しさせていただきますので、とりあえずお乗りくださいませ」  「え?」  パナードはそう言うと巡の腕をグイッと引っ張り、絨毯の方へ投げた。ものの例えではなく言葉の通り、巡をゴミ袋を放るように絨毯の上に投げたのだ。  およそ体重60キロそこそこはあるであろう巡の体を片手でいとも簡単に。  ―なんつー怪力っ!?  そんなことを考えながら逆さまになる巡を、絨毯は見事にキャッチする。  「うげぇっ!」  情けない声を上げながら横たわる巡に続き、カーヤ、パナードも絨毯に飛び乗る。  「よーし!しゅっぱーつ!!」  カーヤが元気にそう叫ぶと、絨毯は急速に高度を上げどこかへと飛んでいくのだった。
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