3人が本棚に入れています
本棚に追加
第9話 火弦の魔法術士
絨毯が地面につき、地に足を付けたのは赤髪のロングヘアを靡かせた少女。
カーヤと同じような黒のローブを着ているが、その裾には赤いフリルがついており、どこか高貴な雰囲気を醸し出している。年頃は16、17ほどで巡とほぼ同い年といった容姿だ。
赤髪の少女は、裾の端を両手でつまみ、小さく頭を下げながら左右に広げた。
「お初にお目にかかりますわ。私、火弦の魔法術士をしております。パナード・ルージュリアと申します。以後お見知りおきを」
パナードと名乗ったその少女はそう言い、頭を上げ巡の方を見た。
巡はパナードの真っすぐで透き通るような瞳に見蕩れ、しばらく言葉を失った。
すると、横からカーヤが巡を小突く。
「一応言っておくけど、パナードは既婚者だからね?変な気起こしても無駄だから」
その言葉に、巡はハッとする。
「い、いや!お前バカっ!違うから!そういうのじゃないから!何勘違いしてんの!?しょうがないわね!」
「それ私の口癖」
カーヤは冷めた目で巡を見る。
「あー、えっと、俺、巡です!麻道巡」
名乗った巡を見て、パナードはニコッと笑った。
「…あなた様が、カーヤの…」
言いかけた言葉をパナードは止めた。
「あっ、いいえ。なんでもございません」
「えっ?」
―俺がカーヤちゃんの…なんだ?
「あれ?魔法術士?魔法氏じゃなくて?」
「その辺りのご説明は、道中お話しさせていただきますので、とりあえずお乗りくださいませ」
「え?」
パナードはそう言うと巡の腕をグイッと引っ張り、絨毯の方へ投げた。ものの例えではなく言葉の通り、巡をゴミ袋を放るように絨毯の上に投げたのだ。
およそ体重60キロそこそこはあるであろう巡の体を片手でいとも簡単に。
―なんつー怪力っ!?
そんなことを考えながら逆さまになる巡を、絨毯は見事にキャッチする。
「うげぇっ!」
情けない声を上げながら横たわる巡に続き、カーヤ、パナードも絨毯に飛び乗る。
「よーし!しゅっぱーつ!!」
カーヤが元気にそう叫ぶと、絨毯は急速に高度を上げどこかへと飛んでいくのだった。
最初のコメントを投稿しよう!