第10話 風弦の魔導志【颯魔】

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第10話 風弦の魔導志【颯魔】

 「で、色々と聞きたいことが山積みなんですが…」  空を駆ける絨毯の上。巡は何かと振り回される現状に対する怒りをなんとか抑えながら、パナードに問う。  「まず、俺はこれから何をすれば?」  パナードは神妙な面持ちで答える。  「これからあなた様には三角房(バミューダ)の長、大老様とご面会していただきますわ」  「たいろうさま?」  「ええ。大老様は、歴史上初めて魔法の力を手にし、この三角房(バミューダ)を想像された魔法界の神に等しい方ですわ」  その説明を聞いて、より頭が混乱する巡。  「なんで俺がそんな人と…」  「魔導志(まどうし)と魔法氏の正式な契約には、大老様の許可が絶対条件なのですわ」  パナードのその言葉に巡はさらに首を傾げる。  「契約???」  パナードも巡の反応に、不可思議な顔をする。  「…ええ。()()()()()()であるあなた様と魔法氏であるカーヤとの正式な…」  ―What???  「俺が…魔導志???」  「はい。魔法氏の魔力を何百倍にも増大させることのできる唯一の存在。それこそがあなた様、風弦の魔導志【颯魔(そうま)】様ですわよ?カーヤから聞いているはずですが…」  巡は、すぐ隣にいたカーヤに視線を向ける。一方のカーヤはあからさまに目を反らしている。 すかさず巡は、カーヤの両肩を掴む。  「お前っ!!めっちゃくちゃ大事な説明全部省いてるじゃねぇか!!なんだよ、俺が魔導志って!?」  それを聞いたパナードも同調する。  「えぇっ!?カーヤ!あなた何も説明せずここまで連れてきたんですの!?」  巡とパナード、二人から責められカーヤは全力で開き直る。  「しょうがないでしょっ!言うタイミングがわからなかったんだから!そんなに二人して責め立てることないじゃない!泣くわよ!?いいの?泣くわよっ!?」  「安心しろ。『泣く』と宣言してから泣く奴はいねぇ」  巡はカーヤに冷たくそう言い放った。  「つまりは…どういうことか説明してくれ」  カーヤの態度に巡は頭を抱え、そう質問した。  しかしカーヤは、機嫌を損ねたのかまたしても顔を反らし無視を続ける。  ―なにへそ曲げてんだ、こいつ…!!腹立つのは普通こっちだろっ!  「はぁ…。仕方ありませんわね。私が改めてご説明させていただきます」  そう言って、再びパナードの説明が始まった。
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